「ちょっとぶつけちゃった」「擦りむいちゃった」という時、私たちは無意識のうちに「打撲」とか「切り傷」と言っていますが、実は医学的には「挫傷(ざしょう)」と「挫創(ざそう)」という、似ているようで異なる状態があります。この 挫傷 挫創 違い を理解することは、怪我をした際の適切な処置を判断するために非常に重要です。
挫傷と挫創、その根本的な違いとは?
まず、挫傷(ざしょう)について説明しましょう。これは、外部からの鈍的な力によって、皮膚や皮下組織、筋肉などが損傷を受ける状態を指します。つまり、皮膚が切れたり剥けたりするわけではなく、内出血や腫れ、痛みを伴うのが特徴です。例えば、階段から落ちて膝を強く打った、ボールが体に当たった、といった場合に起こりやすい怪我です。
- 主な症状:
- 痛み
- 腫れ
- 内出血(あざ)
- 皮膚の色調変化
一方、挫創(ざそう)は、外部からの力によって皮膚や組織が裂けたり、剥がれたりしてできた傷のことです。これは、いわゆる「切り傷」「擦り傷」「裂傷」といった、皮膚の連続性が断たれた状態を広く含みます。例えば、硬いものに皮膚がこすれてできた擦り傷、ガラスの破片などで皮膚が切れた場合などがこれにあたります。
挫傷 挫創 違い を理解する上で大切なのは、損傷の「仕方」です。挫傷は「潰れる」ような衝撃による内側のダメージ、挫創は「裂ける」「削れる」といった外側のダメージと考えると分かりやすいでしょう。
| 種類 | 主な原因 | 皮膚の状態 | 代表的な例 |
|---|---|---|---|
| 挫傷(ざしょう) | 鈍的な外力(打撲、転倒など) | 皮膚の連続性は保たれる | 打撲、内出血、捻挫(関節の挫傷) |
| 挫創(ざそう) | 外力による皮膚の断裂・損傷(擦過、裂傷など) | 皮膚の連続性が断たれる | 擦り傷、切り傷、裂傷 |
挫傷のメカニズムと症状
挫傷は、外部からの衝撃が皮膚や組織に伝わることで生じます。この衝撃の強さや範囲によって、症状の程度は大きく変わります。軽い衝撃であれば、一時的な痛みや軽い腫れで済むこともありますが、強い衝撃が加わると、血管が破れて皮下に出血が起こり、いわゆる「あざ」になります。
- 衝撃の発生: 物にぶつかる、転倒するなどの外力が加わる。
- 組織の圧迫・損傷: 皮膚、皮下組織、筋肉などが圧迫され、毛細血管などが損傷する。
- 内出血と腫れ: 損傷した血管から血液が漏れ出し、周囲の組織に広がって内出血(あざ)や腫れを引き起こす。
症状としては、まず痛みが現れます。これは、神経が刺激されるためです。次に、内出血によって皮膚の色が変化し、時間とともに赤、青、紫、黄色へと変わっていきます。腫れは、炎症反応や内出血した血液が溜まることで起こります。
挫創の多様な形態
挫創には、その原因や傷の形状によっていくつかの種類があります。代表的なものとしては、擦過傷(さっかしょう)、裂傷(れっしょう)、切創(せっそう)が挙げられます。それぞれの特徴を理解しておくと、怪我をした際にどのような傷なのかを把握しやすくなります。
- 擦過傷(さっかしょう): 皮膚が平らな面などにこすれることで、表面が削り取られた傷です。浅い場合は痛みやかさぶたで治りますが、深い場合は細菌感染のリスクが高まります。
- 裂傷(れっしょう): 皮膚が引っ張られたり、衝撃を受けたりして、不規則な形で裂けた傷です。傷口がギザギザしているのが特徴で、出血量が多い場合もあります。
- 切創(せっそう): 包丁やガラスなどで皮膚が鋭利な刃物によって切断された傷です。傷口が直線的で、出血量が多く、深ければ神経や血管を損傷している可能性もあります。
これらの挫創は、見た目だけでなく、治癒の過程や感染のリスクも異なるため、注意が必要です。
挫傷と挫創の応急処置
「挫傷 挫創 違い」を理解した上で、それぞれの応急処置を間違えないようにすることが大切です。どちらの怪我にも共通して言えるのは、まずは清潔に保つことです。しかし、その後の対応が異なります。
挫傷の場合:
- 安静: 患部を動かさないように安静にします。
- 冷却: 腫れや痛みを抑えるために、患部を氷などで冷やします。ただし、冷やしすぎには注意し、タオルなどを挟んで直接肌に当てないようにしましょう。
- 圧迫: 腫れを抑えるために、包帯などで軽く圧迫するのも効果的です。
- 挙上: 可能であれば、患部を心臓より高く保つことで、血流を穏やかにし、腫れを軽減できます。
挫創の場合:
- 止血: 清潔なガーゼなどで傷口を直接圧迫して、出血を止めます。
- 洗浄: 傷口を水道水などで優しく洗い流し、異物を取り除きます。
- 保護: 清潔なガーゼや絆創膏などで傷口を覆い、保護します。
重要な注意点: 傷が深い場合、出血が止まらない場合、感染の疑いがある場合などは、自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。
挫傷の診断と治療
挫傷と診断された場合、その程度によって治療法は異なります。軽度の挫傷であれば、自宅での安静と冷却、必要に応じて鎮痛剤の服用で自然治癒を待ちます。しかし、痛みが強く、腫れがひどい場合や、関節の動きに制限がある場合は、医療機関での診察が必要です。
医療機関では、X線検査などで骨折の有無を確認したり、超音波検査で軟部組織の損傷具合を評価したりすることがあります。治療としては、安静の指示に加え、消炎鎮痛剤の処方、湿布、場合によってはリハビリテーションが行われることもあります。
挫創の処置と感染予防
挫創は、皮膚のバリア機能が破られているため、細菌感染のリスクが伴います。そのため、傷口の清潔を保つことが何よりも重要です。
自宅での処置:
- 傷口を清潔な水で優しく洗い流す。
- 消毒液を使用する場合は、医師の指示に従う。
- 傷口を清潔なガーゼや絆創膏で覆う。
- 毎日、傷口の状態を確認し、交換する。
医療機関での処置: 医師は、傷口の状態に応じて、洗浄、デブリードマン(死んだ組織の除去)、縫合、抗生物質の処方などを行います。特に、傷が深い場合や、動物に噛まれた傷、錆びた金属などでできた傷の場合は、破傷風の予防接種も検討されます。
受診すべきタイミング
「挫傷 挫創 違い」を理解していても、自分で判断が難しい場合や、症状が重い場合は、迷わず医療機関を受診することが大切です。以下のような場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。
- 激しい痛み: 自宅での処置で改善しない、または悪化する痛み。
- 大量の出血: 圧迫しても出血が止まらない場合。
- 傷口の深さ: 皮膚が大きく裂けていたり、肉が見えたりするような深い傷。
- 異物混入: 傷口に異物が入っている疑いがある場合。
- 感染の兆候: 傷口が赤く腫れ上がる、熱を持つ、膿が出る、発熱などの症状がある場合。
- 関節の動きの制限: 傷つけた箇所が関節の近くで、動きが悪くなっている場合。
特に、お子さんの怪我や、ご高齢の方の怪我は、回復が遅れたり、合併症を起こしやすいため、注意が必要です。
「挫傷 挫創 違い」について、ご理解いただけたでしょうか。どちらも身近に起こりうる怪我ですが、その性質や処置法は異なります。正しい知識を持って、日頃から怪我の予防に努め、万が一怪我をしてしまった場合には、適切な初期対応を行いましょう。そして、不安な点や症状が重い場合は、迷わず専門家である医師に相談してください。