ドレナージ ドレーン 違い:知っておきたい医療用語の基本

医療現場でよく耳にする「ドレナージ」と「ドレーン」。この二つの言葉、実は密接に関係していますが、その意味合いには違いがあります。今回は、この「ドレナージ ドレーン 違い」を分かりやすく解説し、それぞれの役割や重要性について掘り下げていきましょう。

ドレナージとドレーンの関係性とは?

「ドレナージ」とは、体内に溜まった液体(血液、膿、リンパ液、浸出液など)を体外へ排出させる医療行為全般を指します。「ドレーン」は、そのドレナージを行うために体内に留置する細い管のことです。つまり、 ドレーンはドレナージという目的を達成するための道具 なのです。

ドレナージは、手術後や感染症、外傷など、様々な状況で必要とされます。体内に不要な液体が溜まると、臓器の圧迫や感染の拡大を引き起こす可能性があるため、速やかに排出することが重要です。ドレーンを挿入することで、この液体を安全かつ効果的に除去し、患者さんの回復を促進します。

ドレナージには、以下のような目的があります:

  • 感染の予防・治療
  • 出血のコントロール
  • 臓器への圧迫の軽減
  • 組織の癒合の促進

ドレーンにも様々な種類があり、材質や形状、機能によって使い分けられます。例えば、

ドレーンの種類 主な用途
ペンローズドレーン 浅い創部の排液
シリコンドレーン 手術後の腔内排液(胸腔、腹腔など)
ハブ付きカテーテル 薬剤投与や栄養補給にも使用

ドレナージの具体的な方法

ドレナージの方法は、溜まっている液体の種類や量、場所によって多岐にわたります。一般的には、手術中にドレーンを挿入し、体外へと誘導します。このドレーンは、吸引器に接続されたり、重力によって自然に排出されるように工夫されたりします。

ドレナージの具体的な手順は、以下のようになります:

  1. 適切なドレーンの選択
  2. 挿入部位の消毒と麻酔
  3. ドレーンの挿入
  4. ドレーンと排液バッグの接続
  5. 排液量のモニタリング

ドレナージの目的を達成するためには、ドレーンの位置や状態を常に確認することが大切です。また、ドレーンが閉塞したり、感染を起こしたりしないように、看護師による丁寧な管理が不可欠となります。

ドレナージにおける注意点としては、

  • ドレーン挿入部位からの感染
  • ドレーンの閉塞
  • 出血
  • 痛みの管理

などが挙げられます。

ドレーンの種類と特徴

ドレーンは、その目的や挿入される部位によって、様々な素材や形状で作られています。例えば、胸腔ドレナージに用いられるものは、肺や心臓といった繊細な臓器に傷つけないよう、柔らかく滑らかな素材が選ばれます。

ドレーンの種類について、さらに詳しく見ていきましょう:

  • シリコンドレーン :柔軟性があり、体内に長期間留置するのに適しています。様々な太さがあり、用途に応じて選択されます。
  • ポリエチレン製ドレーン :比較的硬いため、手術創の比較的浅い部分や、しっかりとした排液が必要な場合に使われることがあります。
  • ガーゼドレーン(ペンローズドレーン) :素材はゴムやプラスチックで、管状になっています。創部からの滲出液などを吸収・排出するのに用いられます。

ドレーンの先端の形状も重要で、排液を効率よく集めるための開口部が工夫されています。例えば、

先端形状 特徴
側孔(サイドホール) 多数の小さな穴が開いており、広範囲からの排液を可能にする
開放端 端が開いており、直接的な排液を促す

ドレナージの適応となる疾患

ドレナージが適用される疾患は多岐にわたります。手術後の合併症予防から、急性期の治療まで、その役割は非常に大きいです。例えば、腹腔内に膿が溜まる腹膜炎や、肺に水が溜まる胸水などでは、ドレナージが不可欠な治療法となります。

ドレナージが適用される主な疾患・病態としては、

  1. 感染症 :膿瘍(のうよう)や菌血症など、体内に感染源がある場合。
  2. 出血 :術後出血や内出血など、体腔内に血液が溜まる場合。
  3. 浸出液 :炎症や手術により、組織から過剰な体液が分泌される場合。
  4. 胸水・腹水 :肺や腹腔内に異常な液体が貯留する場合。

これらの病態では、溜まった液体を速やかに排出し、原因への対処を行うことが、患者さんの予後を大きく左右します。

ドレナージの合併症と注意点

ドレナージは有効な治療法ですが、合併症のリスクもゼロではありません。ドレーンを挿入することで、感染のリスクが高まったり、出血を誘発したりすることがあります。そのため、厳重な管理と細心の注意が必要となります。

ドレナージの合併症としては、以下のようなものが挙げられます:

  • 感染 :ドレーン挿入部からの細菌感染。
  • 出血 :ドレーン操作による血管損傷。
  • ドレーン閉塞 :血栓や組織でドレーンが詰まること。
  • ドレーン破損・脱落 :ドレーンが切れたり、抜けてしまったりすること。
  • 周囲組織の損傷 :ドレーン挿入時に神経や血管を傷つける可能性。

これらの合併症を防ぐためには、

  1. 清潔操作の徹底
  2. ドレーン排液の頻回な観察
  3. 患者さんの状態の注意深いモニタリング
  4. 必要に応じたドレーン交換や抜去

が重要です。

ドレーン管理の重要性

ドレーンは、挿入して終わりではありません。その後の管理が、ドレナージの効果を最大限に引き出し、合併症を予防するために非常に重要です。排液の量、性状、色などを日々記録し、異常があればすぐに医師や看護師に報告することが求められます。

ドレーン管理においては、以下の点が特に重要視されます:

  • 排液の評価
    • :一定時間ごとの排液量を記録し、過剰な出血や排液不足がないか確認します。
    • 性状 :透明、血性、膿性など、排液の性質を観察し、感染の有無などを判断します。
  • ドレーンチューブの管理
    • 閉塞の予防 :チューブが折れ曲がったり、ねじれたりしないように注意します。
    • 清潔の維持 :ドレーン挿入部や接続部の清潔を保ち、感染を防ぎます。
  • 患者さんの状態観察
    • 疼痛 :ドレーン挿入部や周囲の痛みを評価し、必要に応じて鎮痛剤を使用します。
    • 発熱・悪寒 :感染の兆候がないか注意深く観察します。

ドレーン管理は、チーム医療の一環として、医師、看護師、その他の医療スタッフが連携して行われます。

ドレナージとドレーンの違いまとめ

これまで見てきたように、「ドレナージ」は液体を排出する「行為」であり、「ドレーン」はその行為に用いる「道具」です。この二つの言葉を混同してしまうこともありますが、それぞれの意味を理解しておくことで、医療現場でのコミュニケーションもよりスムーズになるはずです。

今回、「ドレナージ ドレーン 違い」について解説しましたが、

  • ドレナージ :溜まった液体を体外へ排出する医療行為。
  • ドレーン :そのドレナージを行うために挿入される管。

という関係性を覚えておくと良いでしょう。患者さん自身やご家族が、ご自身の治療について理解を深めるためにも、ぜひこの知識を活用してください。

医療用語は難しく感じがちですが、基本的な用語の意味を理解することは、安心感につながります。ドレナージとドレーンの違い、そしてそれぞれの重要性について、今回ご理解いただけたなら幸いです。ご自身の健康管理や、大切な人のケアの参考になれば幸いです。

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