敗血症 菌血症 違い、正しく理解して命を守るために

「敗血症」と「菌血症」、これらの言葉を聞いたことはありますか?どちらも細菌が原因で起こる怖い病気ですが、実は意味が少し違います。この違いを正しく理解することは、早期発見と適切な治療につながり、命を守るために非常に重要です。本記事では、この「敗血症 菌血症 違い」について、分かりやすく解説していきます。

菌血症とは?体の中に細菌が入った状態

まず、「菌血症(きんけっしょう)」について説明しましょう。これは、文字通り、血液の中に細菌がいる状態を指します。例えば、どこかを怪我したり、手術をしたり、あるいは風邪やインフルエンザのような感染症にかかった時に、細菌が血管内に入り込んでしまうことがあります。この状態自体が、直接的に命に関わるわけではありません。しかし、 菌血症は、敗血症というさらに重篤な病態への入り口となる可能性があるため、注意が必要なのです。

菌血症が起こる原因は様々です。いくつか例を挙げてみましょう。

  • 怪我や火傷による皮膚の傷口から
  • 歯科治療や内視鏡検査などの医療行為によって
  • 肺炎や尿路感染症といった感染症が原因で
  • カテーテル(体内に留置される管)の挿入部から

菌血症そのものだけでは、症状が軽かったり、全く現れないこともあります。しかし、体質や免疫力の低下など、他の要因が加わることで、急速に悪化することがあります。そのため、原因となっている細菌を特定し、早期に治療を開始することが大切です。

菌血症が確認された場合、医師は原因となっている細菌を特定するために、以下のような検査を行います。

  1. 血液培養検査 :採血した血液を培養し、増殖する細菌の種類を特定します。
  2. 画像検査 :原因となっている感染源(例えば、肺炎であればレントゲンやCT)を調べることもあります。

敗血症とは?菌血症が引き起こす全身の重篤な状態

次に、「敗血症(はいけつしょう)」についてです。敗血症は、菌血症をきっかけとして、体の中に侵入した細菌(またはその毒素)に対して、体の免疫システムが過剰に反応し、全身に炎症が広がってしまう病態です。これは、単に血液中に細菌がいるという状態(菌血症)とは異なり、 体の防御反応が暴走して、自身の臓器を傷つけてしまう、非常に危険な状態なのです。

敗血症になると、体は以下のようなさまざまなサインを示します。

  • 高熱や悪寒(身震い)
  • 呼吸が速くなる、息苦しさ
  • 心拍数が速くなる、血圧が低下する
  • 意識がぼんやりする、混乱
  • 尿の量が減る

これらの症状は、体の様々な臓器(腎臓、肺、脳など)が、炎症によって正常に機能しなくなっていることを示しています。敗血症の治療は、原因となっている細菌を特定し、抗生物質で除去すると同時に、低下した臓器の機能を助けるための対症療法が中心となります。

敗血症の診断と治療には、迅速な判断が求められます。以下は、そのプロセスの一例です。

段階 主な処置
初期対応 バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸数)の確認、血液検査、尿検査
原因特定 血液培養、感染源の特定(レントゲン、CTなど)
治療開始 広域スペクトルの抗生物質の投与、輸液、酸素投与
病状管理 集中治療室(ICU)での管理、人工呼吸器や透析などの補助療法

「敗血症 菌血症 違い」を整理しよう

「敗血症 菌血症 違い」を分かりやすくまとめると、以下のようになります。

  • 菌血症 :血液中に細菌がいる状態。
  • 敗血症 :菌血症が原因で、体の免疫反応が過剰になり、全身の臓器に障害が起きている状態。

つまり、菌血症は敗血症の「原因」や「初期段階」とも言える状態であり、敗血症は菌血症が「進行・悪化」した結果、現れる全身性の重篤な病態なのです。 この違いを理解することは、病気の重症度を把握し、適切な対応をとるために不可欠です。

症状の違い:初期症状と進行した症状

菌血症と敗血症では、現れる症状にも違いが見られます。菌血症の段階では、発熱や倦怠感など、風邪のような軽い症状で済むことも少なくありません。しかし、敗血症に進行すると、体温が極端に高くなったり、逆に低くなったり、意識障害、呼吸困難、血圧低下など、命に関わる深刻な症状が現れます。

  1. 菌血症の主な症状
    • 発熱(微熱~高熱)
    • 悪寒
    • 倦怠感
    • 感染部位の痛み
  2. 敗血症の主な症状
    • 高熱または低体温
    • 頻脈(脈が速くなる)
    • 頻呼吸(呼吸が速くなる)
    • 低血圧
    • 意識障害(錯乱、眠気、昏睡)
    • 尿量の減少
    • 皮膚の蒼白、冷感、斑点状の出血

原因となる細菌の種類:共通点と違い

菌血症や敗血症の原因となる細菌は多岐にわたります。一般的に、私たちの周りにも存在する常在菌や、感染症を引き起こす病原菌などが原因となります。しかし、どのような細菌が原因であっても、それが体内で増殖し、免疫システムを過剰に刺激することが問題となります。

  • グラム陽性菌 :ブドウ球菌、レンサ球菌など
  • グラム陰性菌 :大腸菌、肺炎球菌、緑膿菌など
  • 真菌(カビ) :カンジダなど(免疫力が低下している場合に起こりやすい)

菌血症の段階では、原因菌が特定されれば、その菌に有効な抗生物質で治療が行われます。敗血症に至った場合も、原因菌の特定は重要ですが、細菌の種類だけでなく、体の炎症反応を抑える治療も同時に行われる必要があります。

診断方法の違い:検査で何を見るか

菌血症と敗血症の診断には、共通する検査項目もありますが、その目的や解釈が異なります。菌血症の診断では、主に血液培養で細菌の有無と種類を確認することが最優先されます。一方、敗血症の診断では、菌血症の証拠に加え、全身の炎症反応の指標(CRP、白血球数など)や、臓器障害の有無(肝機能、腎機能、血液凝固能など)を多角的に評価します。

検査項目 菌血症での主な役割 敗血症での主な役割
血液培養 細菌の検出と特定 原因菌の特定(治療方針決定に重要)
炎症マーカー(CRP、白血球数など) 炎症の有無の参考 炎症の強さ、重症度評価、治療効果判定
臓器機能検査(肝機能、腎機能など) (場合による) 臓器障害の評価、重症度判定

治療法の違い:原因と全身状態へのアプローチ

治療法においても、「敗血症 菌血症 違い」は明確です。菌血症の段階では、原因となっている細菌を特定し、それに対する抗生物質を投与することで、多くの場合、軽快します。しかし、敗血症となると、抗生物質による感染源の除去に加え、全身に広がった炎症を抑え、低下した臓器の機能を維持するための集中的な治療が必要となります。

  1. 菌血症の治療
    • 原因菌に合わせた抗生物質の投与
    • 原因となっている感染源の除去(例:膿の排出)
  2. 敗血症の治療
    • 早期の広域スペクトル抗生物質投与(原因菌特定前でも)
    • 輸液による循環管理
    • 酸素投与、人工呼吸器管理
    • 血圧を維持するための薬剤投与
    • 必要に応じた人工透析、臓器サポート

予後の違い:早期発見・治療の重要性

「敗血症 菌血症 違い」を理解することが、予後(病気の経過や治り具合)にも大きく関わってきます。菌血症の段階で、早期に原因菌が特定され、適切な抗生物質治療が開始されれば、重症化せずに回復する可能性が高いです。しかし、敗血症に進行してしまうと、たとえ治療が行われても、臓器障害が残ったり、命に関わる危険性が高くなります。

  • 菌血症の予後 :早期発見・治療で良好な場合が多い。
  • 敗血症の予後 :重篤化しやすく、死亡率も高い。合併症のリスクも高まる。

このため、感染症にかかった際に、発熱や倦怠感などの症状があれば、放置せずに早めに医療機関を受診することが、菌血症から敗血症への進行を防ぐ上で非常に重要です。

「敗血症 菌血症 違い」について、ご理解いただけたでしょうか。どちらも細菌が原因で起こる病気ですが、その意味合いや重症度は異なります。菌血症は血液中に細菌がいる状態、敗血症はその細菌が引き起こす全身の重篤な状態です。この違いを正しく認識し、体調の変化に気を配ることが、早期発見と適切な治療、そして何よりも命を守ることにつながります。

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