「卵巣嚢胞」と「卵巣嚢腫」、この二つの言葉、実は同じものを指すことが多いのです。しかし、微妙なニュアンスの違いや、病状の進行度合いによって使い分けられることも。今回は、この「卵巣嚢胞 卵巣嚢腫 違い」について、皆さんが疑問に思うであろう基本から、原因、そしてそれぞれの種類まで、分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
卵巣嚢胞と卵巣嚢腫、言葉の定義と使い分け
一般的に、卵巣にできた袋状のものを「卵巣嚢胞」と呼びます。これは、生理的な変化でできる良性のものから、病的なものまで幅広く含まれる言葉です。一方、「卵巣嚢腫」は、嚢胞の中でも、ある程度の大きさや、腫瘍性（がんの可能性を含む）のもの、または治療が必要と判断されるものを指すことが多い傾向にあります。 この「卵巣嚢胞 卵巣嚢腫 違い」を理解することは、ご自身の体の状態を知る上で非常に大切です。
具体的にどのように使い分けられるか、いくつかの例を見てみましょう。
- 生理的な嚢胞： 排卵の過程でできる機能性嚢胞などは、一般的に「卵巣嚢胞」と呼ばれることが多いです。
- 腫瘍性の嚢胞： 良性腫瘍や悪性腫瘍（がん）が原因でできる嚢胞は、「卵巣嚢腫」と呼ばれることが増えます。
- 大きさや症状： 小さなもので、症状もなければ「嚢胞」、大きくなったり、痛みなどの症状が出たり、医師が注意深く経過観察や治療が必要と判断した場合は「嚢腫」と呼ばれることもあります。
このように、明確な境界線があるわけではなく、文脈や病状の重さによって使い分けられているのが実情です。どちらの言葉が使われたとしても、まずは医師の診断を仰ぐことが最も重要です。
卵巣嚢胞・卵巣嚢腫ができる原因
卵巣嚢胞や卵巣嚢腫ができる原因は、その種類によって様々ですが、大きく分けて「機能性」と「腫瘍性」に分けられます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
| 原因のタイプ | 主な原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 機能性 | 卵巣の正常な働き（排卵やホルモンバランス）に関連 | 生理的な変化で、多くは自然に消退する |
| 腫瘍性 | 卵巣の細胞の異常な増殖 | 良性、悪性（がん）、境界悪性腫瘍などがある |
機能性の嚢胞は、排卵の際にできる「卵胞」が大きくなりすぎたり、排卵後にしぼむはずの「黄体」が残ってしまったりすることで発生します。これらは、ホルモンバランスの影響を強く受けます。
一方、腫瘍性の嚢胞は、卵巣の細胞自体が異常に増殖することで形成されます。これらは、良性のものから、悪性（がん）のものまで、幅広い性質を持ちます。原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因などが関与していると考えられています。
卵巣嚢胞 卵巣嚢腫 違いを理解する上で、原因を知ることは、どのような対応が必要になるかを考える上で役立ちます。
機能性嚢胞の種類と特徴
機能性嚢胞は、卵巣の正常な生理機能に伴ってできるもので、一般的に良性であり、特別な治療なしに自然に消退することがほとんどです。しかし、その種類によって少しずつ特徴が異なります。
機能性嚢胞には、主に以下の2種類があります。
- 卵胞嚢腫（らんほうのうしゅ）： 排卵期に卵胞がうまく育たず、そのまま大きくなってしまうものです。生理周期とともに大きさが変化し、生理が来ると小さくなることが多いのが特徴です。
- 黄体嚢腫（こうたいのうしゅ）： 排卵後にできる黄体が、通常より大きく発達したり、出血を伴ったりしてできるものです。これも生理周期と関連が深く、生理が始まると消退することが期待できます。
これらの機能性嚢胞は、大きさによっては圧迫感や鈍痛を感じることもありますが、多くは無症状です。定期的な検診で発見されることが一般的です。
卵巣嚢胞 卵巣嚢腫 違いという観点では、機能性嚢胞は「嚢胞」と呼ばれることが圧倒的に多く、「嚢腫」とまで呼ばれることは少ない傾向にあります。
腫瘍性嚢胞の種類と特徴
腫瘍性嚢胞は、卵巣の細胞が異常に増殖してできるものです。これらは、良性、悪性（がん）、そしてその中間である境界悪性腫瘍に分けられます。この区別は、治療方針や予後に大きく影響するため、非常に重要です。
腫瘍性嚢胞の主な種類は以下の通りです。
- 良性腫瘍： 卵巣の細胞が異常に増殖しても、周囲の組織に広がることはなく、転移もしません。子宮内膜症性嚢胞腫（チョコレート嚢胞）や奇形腫（ダーモイド嚢胞）なども、この良性腫瘍の範疇に含まれることがあります。
- 悪性腫瘍（卵巣がん）： 卵巣の細胞が悪性化し、急速に増殖して周囲の組織に広がり、他の臓器にも転移する可能性のあるがんです。
- 境界悪性腫瘍： 良性と悪性の中間の性質を持つ腫瘍で、悪性腫瘍のように広がることは少ないですが、再発の可能性があったり、一部悪性化したりすることもあります。
腫瘍性嚢胞は、機能性嚢胞と異なり、自然に消退することはなく、大きくなったり、症状を引き起こしたりすることがあります。そのため、発見された場合は、詳細な検査と適切な治療が必要となります。
卵巣嚢胞・卵巣嚢腫の症状
卵巣嚢胞や卵巣嚢腫は、初期にはほとんど症状がないことが多いです。「サイレントキラー」と呼ばれることもあるほど、自覚症状が出にくい病気です。しかし、嚢胞が大きくなったり、出血したり、破裂したりすると、様々な症状が現れることがあります。
一般的に見られる症状には、以下のようなものがあります。
- 下腹部や腰の痛み・違和感： 嚢胞が大きくなることで、周囲の臓器を圧迫したり、炎症を起こしたりして痛みが生じます。
- お腹の張りや膨満感： 嚢胞の大きさに比例して、お腹が張ったり、ズボンがきつくなったりすることがあります。
- 頻尿や便秘： 膀胱や直腸が圧迫されることで、頻尿や便秘といった症状が出ることがあります。
- 不正出血： ホルモンバランスの乱れによって、生理以外の出血が見られることがあります。
- 吐き気や嘔吐： 嚢胞がねじれたり（茎捻転）、破裂したりすると、強い痛みを伴い、吐き気や嘔吐を引き起こすことがあります。
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、自己判断せず、早めに婦人科を受診することが大切です。
卵巣嚢胞・卵巣嚢腫の検査方法
卵巣嚢胞や卵巣嚢腫の診断には、いくつかの検査方法が用いられます。これらの検査を組み合わせることで、嚢胞の種類や状態を正確に把握し、適切な治療法を検討します。
主な検査方法には、以下のものがあります。
- 内診： 医師が直接、手で卵巣の状態を確認します。
- 経腟超音波検査： 膣から超音波プローブを挿入し、卵巣の形、大きさ、内部の構造などを詳しく調べます。最も一般的で重要な検査です。
- 経腹超音波検査： お腹の上から超音波をあてて検査します。
- MRI検査： より詳細な画像を得るために行われることがあります。
- CT検査： 他の臓器への広がりなどを確認するために行われることがあります。
- 腫瘍マーカー検査： 血液検査で、卵巣がんの可能性を示す特定の物質の値を測定します。あくまで補助的な検査であり、これだけで診断はできません。
これらの検査結果を総合的に判断して、医師は「卵巣嚢胞」なのか「卵巣嚢腫」なのか、そしてそれがどのような性質のものなのかを診断します。
卵巣嚢胞・卵巣嚢腫の治療法
卵巣嚢胞や卵巣嚢腫の治療法は、その種類、大きさ、症状、そして患者さんの年齢や妊娠希望の有無などによって大きく異なります。一概に「この治療法」というものはなく、個々の状況に合わせて最適な方法が選択されます。
以下に、主な治療方針をいくつかご紹介します。
- 経過観察： 機能性嚢胞など、良性で小さく、症状もない場合は、定期的な検診で経過を観察することが多いです。
- 薬物療法： ホルモンバランスの乱れが原因と考えられる場合や、一部の良性腫瘍に対して、低用量ピルなどのホルモン剤が処方されることがあります。
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手術療法：
- 開腹手術： お腹を大きく切開して行う手術です。
- 腹腔鏡手術： お腹に数カ所小さな穴を開け、カメラと手術器具を入れて行う低侵襲手術です。
- 開腹手術と腹腔鏡手術の選択： 嚢胞の大きさ、悪性の疑いの有無、患者さんの状態などによって判断されます。
手術では、嚢胞のみを取り除く「嚢胞摘出術」や、卵巣全体を摘出する「卵巣摘出術」、さらに子宮や卵管も摘出する「子宮卵巣摘出術」などがあります。妊娠を希望される方や若い方には、できるだけ卵巣を残す温存手術が選択されることが一般的です。
「卵巣嚢胞 卵巣嚢腫 違い」による治療方針の違いを理解することも、ご自身の病気と向き合う上で大切です。
最終的な治療法は、医師とよく相談し、納得した上で決定することが何よりも重要です。
卵巣嚢胞や卵巣嚢腫は、女性にとって身近な病気であり、早期発見・早期治療が何よりも大切です。今回解説した「卵巣嚢胞 卵巣嚢腫 違い」や、それぞれの原因、種類、症状、検査、治療法についての知識を深めることで、ご自身の体の変化にいち早く気づき、適切に対処できるようになることを願っています。不安なことがあれば、遠慮なく婦人科医に相談しましょう。