腺腫とポリープの違いは何ですか?意外と知らない体のサイン

「腺腫(せんしゅ)とポリープの違いは何ですか?」という疑問は、多くの方が一度は抱えるのではないでしょうか。どちらも体の表面や内部にできる「できもの」として知られていますが、その性質や将来的なリスクには違いがあります。この違いを理解することは、ご自身の健康管理において非常に重要です。

「腺腫」と「ポリープ」:見た目だけではわからない本質的な違い

まず、最も基本的な違いとして、ポリープというのは「粘膜から飛び出した状態のできもの」という形態学的な総称です。つまり、見た目の特徴を指す言葉であり、その中には様々な種類の組織が含まれています。一方、腺腫は、腺組織(分泌物などを出す組織)が悪性化する手前、つまり「前がん病変」として扱われることが多い、病理学的な診断名です。 この「前がん病変」という点が、腺腫と一般的なポリープの大きな違いであり、将来的ながん化のリスクを考える上で見逃せません。

具体的に言うと、ポリープと一口に言っても、炎症によってできるもの、過形成(組織が増えすぎる)によってできるもの、そして腺腫のように将来がんになる可能性のあるものなど、多岐にわたります。たとえば、胃や大腸で見つかるポリープの中には、良性のものも多く、特別な治療を必要としない場合もあります。しかし、その中に腺腫が含まれているかどうかは、顕微鏡での組織検査(生検)によって初めて明確になります。

以下に、ポリープの種類と腺腫の位置づけをまとめました。

  • ポリープ(形態学的な総称)
    • 炎症性ポリープ
    • 過形成性ポリープ
    • 腺腫(病理学的な診断名、前がん病変)
    • その他の良性腫瘍

腺腫の正体:がんへの第一歩?

腺腫は、腺組織が異常をきたし、細胞が増殖し始めた状態を指します。これは、がんになる前の段階、つまり「前がん病変」と位置づけられることがほとんどです。特に大腸腺腫は、大腸がんの多くがこの腺腫から発生すると考えられており、早期発見・早期切除が非常に重要視されています。

腺腫は、その組織の構造によってさらにいくつかの種類に分けられます。例えば、大腸腺腫には以下の種類があります。

  1. 管状腺腫(かんじょうせんしゅ) :最も一般的なタイプで、がん化するリスクは比較的低いとされます。
  2. 絨毛管状腺腫(じゅうもうかんじょうせんしゅ) :管状腺腫よりもがん化するリスクが高いとされます。
  3. 絨毛腺腫(じゅうもうせんしゅ) :最もがん化するリスクが高いタイプです。

これらの腺腫は、見た目では診断が難しく、病理検査で初めて確定診断が下されます。そのため、ポリープが見つかった場合には、その組織を採取して詳しく調べる検査が不可欠となります。

腺腫ががん化するまでの期間は、その種類や大きさ、数によって異なりますが、一般的には数年から十数年かかると言われています。この時間的猶予があるからこそ、定期的な検査で早期に発見し、治療することが可能になるのです。

腺腫の種類とがん化リスク
種類 がん化リスク
管状腺腫
絨毛管状腺腫
絨毛腺腫

ポリープが見つかったら?:知っておきたい検査と対応

もし、内視鏡検査などでポリープが見つかった場合、次にどのような対応が取られるのか、多くの方が不安に感じるでしょう。まず、医師はポリープの見た目や大きさ、数などを確認します。そして、その場で切除(ポリペクトミー)することが可能であれば、切除して病理検査に提出するのが一般的です。

病理検査の結果、「腺腫」と診断された場合、その種類や大きさによっては、定期的な経過観察が必要になります。例えば、小さな管状腺腫であれば、数年おきに内視鏡検査を受けることが推奨されます。しかし、絨毛腺腫のようなリスクの高い腺腫であれば、より短い間隔での検査や、追加の治療が必要になることもあります。

ポリープの発見から治療までの流れは、以下のようになります。

  1. 内視鏡検査でのポリープ発見
  2. ポリープの切除(可能な場合)
  3. 病理検査による組織診断
  4. 診断結果に基づいた今後の対応(経過観察、追加治療など)

病理検査の結果は、医師から直接説明を受けることになります。ご自身の体の状態を正確に理解し、今後の健康管理に役立てるためにも、疑問点は遠慮なく質問することが大切です。

ポリープの切除は、多くの場合、内視鏡を用いて行われます。局所麻酔で、比較的痛みが少なく、日帰りで可能な場合も多いです。ただし、ポリープの大きさや場所によっては、入院が必要になることもあります。

どこにできるの?:ポリープと腺腫の発生部位

ポリープや腺腫は、体の様々な場所に発生する可能性があります。代表的な部位としては、消化器系、特に胃や大腸が挙げられます。しかし、それ以外にも、鼻腔(びくう)、膀胱、子宮など、粘膜のある場所であればどこにでもできる可能性があります。

それぞれの部位によって、ポリープや腺腫の性質や、がん化のリスクも異なります。例えば、大腸ポリープの多くは腺腫であり、大腸がんとの関連が深いことが知られています。一方、胃ポリープの中には、腺腫以外の良性のものも多く見られます。

発生部位ごとの一般的なポリープ・腺腫の特徴をまとめると以下のようになります。

  • 大腸 :腺腫が多く、大腸がんの発生源となることが多い。
  • :過形成性ポリープなど良性のものも多いが、腺腫も存在する。
  • 鼻腔 :鼻ポリープ(鼻茸:はなたけ)と呼ばれるものは、アレルギーや慢性副鼻腔炎によって生じることが多い。
  • 膀胱 :膀胱ポリープは、炎症や結石などによってできることがある。
  • 子宮(子宮内膜ポリープ) :ホルモンバランスの乱れなどが原因でできることがある。

「症状」はあるの?:ポリープ・腺腫のサインを見逃さない

ポリープや腺腫があっても、初期の段階ではほとんど症状がないことがほとんどです。そのため、定期的な健康診断や検診で発見されることが多くなります。しかし、ポリープが大きくなったり、数が増えたり、あるいはがん化が進んだりすると、以下のような症状が現れることがあります。

症状は、ポリープのできた場所によって異なります。

  1. 消化器系(胃、大腸など)
    • 血便(黒っぽい便や鮮血)
    • 便秘や下痢の繰り返し
    • 腹痛
    • 貧血(慢性的な出血による)
    • 体重減少
  2. 鼻腔
    • 鼻づまり
    • 鼻水
    • 嗅覚の低下
  3. 子宮
    • 不正出血
    • 過多月経
    • 生理痛

これらの症状が全てポリープや腺腫によるものとは限りませんが、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

特に、大腸ポリープや腺腫からの出血は、便に混じって気づきにくいこともあります。定期的な便潜血検査で異常を指摘された場合は、必ず大腸内視鏡検査を受けるようにしましょう。

リスクを減らすには?:生活習慣との関連性

ポリープや腺腫、特にがん化するリスクのある腺腫を予防するためには、日頃の生活習慣が重要になります。食生活の改善や、適度な運動、禁煙などは、がん全般のリスクを減らすことにもつながります。

具体的には、以下のような点が挙げられます。

  • バランスの取れた食事 :野菜や果物を多く摂り、肉類や加工食品、高脂肪食を控える。
  • 食物繊維の摂取 :食物繊維は腸内環境を整え、ポリープの発生を抑制する効果があると言われています。
  • 適度な運動 :体を動かすことは、代謝を促進し、健康維持に役立ちます。
  • 禁煙 :喫煙は、がんのリスクを高めることが科学的に証明されています。
  • 節酒 :過度な飲酒は、消化器系のがんのリスクを高める可能性があります。

これらの生活習慣は、ポリープや腺腫だけでなく、様々な病気の予防に効果的です。健康的な生活を送ることは、将来の健康への投資と言えるでしょう。

まとめ:早期発見・早期治療が鍵

「腺腫とポリープの違いは何ですか?」という疑問に触れてきましたが、ポリープは形態的な総称であり、その中にがん化する可能性のある「腺腫」が含まれることがある、という点が重要です。腺腫は前がん病変として、早期に発見し、適切に対処することが、がんの予防に繋がります。

ご自身の体のサインに注意を払い、定期的な検診を受けること。そして、もしポリープなどの「できもの」が見つかった際には、医師の指示に従って適切な検査や治療を受けることが、健康を維持するために最も大切なことです。早期発見・早期治療を心がけ、健やかな毎日を送りましょう。

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