「腎炎」と「腎盂炎」、どちらも腎臓に関わる病気ですが、その原因や症状、治療法には違いがあります。この二つの病気の違いを理解することは、早期発見・早期治療につながるため、とても重要です。本記事では、「腎炎 腎盂炎 違い」について、わかりやすく解説していきます。
腎炎と腎盂炎、どこが違うの？
「腎炎」は、腎臓の組織そのものが炎症を起こしてしまう病気の総称です。腎臓の働きを悪くしてしまう可能性があり、原因は様々です。一方、「腎盂炎」は、腎臓の「腎盂」という部分に細菌感染が起こり、炎症を起こしている状態を指します。これは、一般的に「尿路感染症」の一部として考えられています。
この二つの病気の「腎炎 腎盂炎 違い」を理解する上で、まずはそれぞれの病気の原因と特徴を見ていきましょう。
- 腎炎 ：自己免疫疾患（自分の体が自分の体を攻撃してしまう病気）や感染症、薬剤の副作用などが原因で腎臓の組織に炎症が起こります。
- 腎盂炎 ：主に大腸菌などの細菌が尿道から侵入し、膀胱炎を経て腎臓まで感染が広がった場合に起こります。
この違いを把握しておくことは、自分の体の異変に気づき、適切な受診につなげるために非常に重要です。
以下に、それぞれの病気について、もう少し詳しく見ていきましょう。
| 病気 | 主な原因 | 影響する部位 |
|---|---|---|
| 腎炎 | 自己免疫疾患、感染症、薬剤など | 腎臓の組織全体 |
| 腎盂炎 | 細菌感染（尿路感染症） | 腎盂（腎臓の出口付近） |
腎炎の主な種類と原因
腎炎と一口に言っても、その原因や発症のメカニズムによっていくつかの種類に分けられます。代表的なものとしては、ネフローゼ症候群や急性腎炎、慢性腎炎などがあります。これらの病気は、腎臓のフィルター機能に障害を引き起こし、体に必要なタンパク質が漏れ出たり、老廃物がうまく排出されなくなったりします。
原因は多岐にわたりますが、主なものを以下に挙げます。
- 自己免疫疾患 ：IgA腎症、ループス腎炎など、免疫システムが誤って自分の腎臓を攻撃してしまう
- 感染症 ：溶連菌感染症の後遺症として起こることもある
- 薬剤 ：一部の痛み止めや抗生物質が腎臓に負担をかけることがある
- 高血圧や糖尿病 ：これらの病気が長期間続くと、腎臓の血管にダメージを与え、腎機能低下につながる
腎炎の症状は、初期には自覚症状がないことも多い ため、定期的な健康診断で尿検査や血液検査を受けることが大切です。尿にタンパク質や血液が混じっていたり、腎機能を示す数値（クレアチニン、BUNなど）に異常が見られたりすることが、早期発見の手がかりとなります。
腎炎の治療は、原因となっている病気や腎臓のダメージの程度によって異なります。ステロイド薬や免疫抑制剤を用いたり、血圧管理や食事療法を行ったりすることが一般的です。
腎盂炎のメカニズムと症状
腎盂炎は、一般的に「上部尿路感染症」と呼ばれるもので、細菌が腎盂に感染し、炎症を引き起こす状態です。多くの場合、膀胱炎が進行して腎盂まで感染が広がることが原因です。女性は男性よりも尿道が短いため、細菌が侵入しやすく、腎盂炎にかかりやすい傾向があります。
腎盂炎の典型的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 高熱 ：突然、38℃以上の高熱が出ることが多い
- 腰や背中の痛み ：腎臓のあるあたり（腰背部）に鈍い痛みや重い痛みを感じる
- 悪寒・戦慄 ：寒気を感じ、体が震える
- 吐き気・嘔吐 ：体調が悪く、気分が悪くなることがある
これらの症状に加えて、膀胱炎の症状（頻尿、排尿時の痛み、残尿感など）が併存することもあります。 腎盂炎は、放置すると腎臓に深刻なダメージを与えたり、敗血症（血液中に細菌が入り込み、全身に広がる重篤な状態）を引き起こしたりする可能性があるため、速やかな治療が必要です。
腎盂炎の診断は、尿検査で細菌や白血球の有無を確認し、場合によっては血液検査や画像検査（超音波検査など）を行って行われます。治療の基本は、原因となっている細菌に効果のある抗生物質の投与です。
| 症状 | 腎炎 | 腎盂炎 |
|---|---|---|
| 発熱 | あまり一般的ではない、あっても軽度 | 高熱（38℃以上）が特徴 |
| 痛み | 比較的軽度、または無症状 | 腰背部の鈍痛、重い痛み |
| 全身症状 | むくみ、倦怠感など | 悪寒、吐き気、嘔吐 |
「腎炎 腎盂炎 違い」を理解するためのチェックポイント
「腎炎 腎盂炎 違い」をより明確にするために、いくつかのチェックポイントをまとめました。まずは、ご自身の体のサインに注意を払うことが大切です。
- 発熱の有無と程度 ：急に高熱が出た場合は、腎盂炎の可能性を疑いましょう。腎炎では、発熱はあまり典型的な症状ではありません。
- 痛みの場所と性質 ：腰や背中（腎臓のあるあたり）に強い痛みがある場合は、腎盂炎の可能性が高いです。腎炎の場合は、痛みが慢性的な場合や、全くない場合もあります。
- 全身症状 ：悪寒や吐き気、嘔吐などの症状がある場合は、感染症による炎症である腎盂炎の可能性が考えられます。
- 排尿時の症状 ：排尿時の痛みや頻尿、残尿感がある場合は、膀胱炎の合併、すなわち腎盂炎へと進行している可能性も考慮しましょう。
これらのチェックポイントはあくまで目安であり、自己判断は禁物です。 少しでも気になる症状があれば、速やかに医療機関を受診することが、正確な診断と適切な治療につながります。
医師は、これらの情報に加え、尿検査、血液検査、画像検査などを総合的に判断して、診断を行います。
専門医による診断の重要性
「腎炎 腎盂炎 違い」は、素人目には判断が難しい場合も少なくありません。自己判断で市販薬などを服用したり、様子を見たりすることは、病状を悪化させるリスクがあります。したがって、専門医による正確な診断が不可欠です。
医師は、患者さんの自覚症状を詳しく聞き取り、以下のような検査を行います。
- 尿検査 ：尿中の白血球、赤血球、タンパク質、細菌などを調べます。
- 血液検査 ：腎機能（クレアチニン、BUNなど）や炎症の程度（CRPなど）を調べます。
- 画像検査 ：腹部超音波検査（エコー）、CT検査などで、腎臓の形や腫れ、水腎症（尿の流れが滞って腎臓が腫れている状態）などを確認します。
これらの検査結果を総合的に評価することで、腎炎なのか、腎盂炎なのか、あるいはその他の病気なのかを正確に診断することができます。 早期に専門医の診断を受けることが、腎臓を守るための最も確実な方法です。
日常生活での注意点と予防
腎炎や腎盂炎を予防するため、あるいは再発を防ぐためには、日頃の生活習慣が大切です。「腎炎 腎盂炎 違い」を理解した上で、それぞれの病気にならないための注意点を心がけましょう。
- 十分な水分摂取 ：こまめに水分を摂ることで、尿を薄め、細菌の繁殖を抑える効果が期待できます。特に夏場や運動時、発熱時などは意識して水分を摂りましょう。
- 規則正しい生活とバランスの取れた食事 ：健康な体は、免疫力を高め、病気にかかりにくい体を作ります。
- 体を冷やさない ：体を冷やすと血行が悪くなり、免疫力が低下することがあります。特に下半身を冷やさないように注意しましょう。
- 排尿を我慢しない ：尿を長時間我慢すると、膀胱に細菌が繁殖しやすくなります。
- 性交渉後の排尿 ：女性の場合、性交渉後に排尿することで、尿道に入った細菌を洗い流す効果が期待できます。
- 高血圧や糖尿病の管理 ：これらの基礎疾患がある場合は、しっかりと治療を継続し、腎臓への負担を軽減することが重要です。
「腎炎 腎盂炎 違い」を理解し、それぞれの原因に応じた予防策を講じることが、健康な腎臓を維持するために役立ちます。
まとめ：賢く「腎炎 腎盂炎 違い」を理解して、腎臓の健康を守りましょう
「腎炎 腎盂炎 違い」について、その原因、症状、診断、そして予防策について詳しく解説してきました。腎炎は腎臓の組織自体の炎症、腎盂炎は細菌感染による腎盂の炎症という違いがあります。どちらも放置すると腎機能に影響を与える可能性があるため、早期発見・早期治療が何よりも大切です。
本記事で解説した「腎炎 腎盂炎 違い」に関する知識を活かし、ご自身の体の変化に敏感になり、気になる症状があれば迷わず医療機関を受診してください。健康な腎臓を維持するために、日頃からのケアと正しい知識が、あなたの健康を守る力となります。