パーキンソン病とALS(筋萎縮性側索硬化症)は、どちらも神経の病気ですが、その原因や症状、進行の仕方は大きく異なります。この二つの病気の違い、つまり パーキンソン病 als 違い を正しく理解することは、患者さんやご家族が適切な治療やサポートを受けるために非常に重要です。
パーキンソン病とALS、症状の現れ方の違い
パーキンソン病とALSの最も大きな違いは、主に影響を受ける神経の部位と、それによって引き起こされる症状のタイプです。パーキンソン病は、脳の中の「黒質」という部分にあるドーパミンを作る神経細胞が減ることで起こります。このドーパミンは、体の動きをスムーズにするためにとても大切です。そのため、パーキンソン病では、体の動きがゆっくりになったり、震えが出たり、筋肉がこわばったりといった運動症状が中心となります。
一方、ALSは、脳から手足への命令を伝える「運動ニューロン」という神経細胞が障害される病気です。この運動ニューロンは、筋肉を動かすための信号を送る役割をしています。ALSになると、この信号がうまく伝わらなくなり、次第に筋肉が痩せて(萎縮して)、力が抜けてしまう(麻痺)という症状が現れます。手足の筋肉のほか、言葉を話す筋肉や飲み込む筋肉、呼吸をするための筋肉にも影響が出てくることがあります。
ここで、それぞれの病気の主な症状をまとめた表を見てみましょう。
| 病名 | 主な症状 |
|---|---|
| パーキンソン病 |
|
| ALS |
|
原因と進行のメカニズム
パーキンソン病の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、加齢が最も大きなリスクファクターと考えられています。また、遺伝的な要因や、一部の環境因子(農薬など)との関連も研究されています。病気の進行は、一般的にゆっくりで、数年から十数年かけて症状が進むことが多いです。
ALSの原因も、まだ不明な点が多いです。約9割は原因不明の「孤発性ALS」で、残りの約1割は遺伝子の異常による「家族性ALS」です。ALSの進行は比較的早く、診断から数年で重篤な状態になることも少なくありません。 病気の進行速度は、患者さん一人ひとりによって大きく異なります。
ALSの進行に関わる主な要因:
- 運動ニューロンの変性
- 神経伝達物質の異常
- 炎症反応
診断方法の違い
パーキンソン病の診断は、主に医師による問診や神経学的な診察に基づいて行われます。特徴的な運動症状を確認することが重要です。必要に応じて、脳のMRI検査や、ドーパミン神経の機能を調べる検査(DATスキャンなど)が行われることもあります。ただし、初期には他の病気との区別が難しい場合もあります。
ALSの診断も、問診や神経学的な診察が基本となります。筋力低下や筋肉の萎縮、腱反射の異常などを確認します。ALSと似た症状を引き起こす他の病気(脊髄の病気や末梢神経の病気など)を除外するために、筋電図検査や神経伝導速度検査、MRI検査などが重要になります。 正確な診断のためには、専門医による慎重な検査が必要です。
診断のための検査:
- 問診
- 神経学的診察
- 筋電図検査
- MRI検査
- 血液検査
治療法の選択肢
パーキンソン病の治療の基本は、薬物療法です。ドーパミンの働きを補う薬(レボドパ製剤など)が中心となります。これらの薬で、運動症状を改善させ、QOL(生活の質)の向上を目指します。病気の進行に合わせて、薬の種類や量を調整していきます。また、運動療法やリハビリテーションも、体の動きを維持するために重要です。
ALSの治療は、残念ながら現在のところ完治させる方法は確立されていません。しかし、病気の進行を遅らせる薬(リルゾール、エダラボンなど)や、症状を和らげる対症療法が中心となります。呼吸機能の低下に対する人工呼吸器の装着や、嚥下機能の低下に対する栄養管理(胃ろうなど)も、生活の質を保つために重要です。 早期からの多職種連携によるサポートが、患者さんの生活を支えます。
治療の目標:
- 症状の緩和
- 病気の進行抑制
- QOLの維持・向上
合併症と予後
パーキンソン病では、運動症状以外にも、便秘、睡眠障害、うつ病、認知機能の低下などが起こることがあります。これらの非運動症状も、QOLに大きく影響します。病気の進行は比較的ゆっくりですが、放置すると日常生活が困難になることがあります。適切な治療とケアにより、長期間にわたって安定した生活を送ることも可能です。
ALSの合併症としては、呼吸筋の麻痺による呼吸不全が最も深刻です。また、嚥下障害による誤嚥性肺炎や、全身の筋力低下による褥瘡(床ずれ)なども注意が必要です。ALSの予後は、病気の進行速度や合併症の有無によって大きく異なりますが、一般的にパーキンソン病よりも厳しいとされています。 しかし、最新の研究により、新しい治療法の開発も進んでいます。
リハビリテーションの役割
パーキンソン病のリハビリテーションでは、運動機能の維持・改善を目指します。歩行訓練、バランス訓練、ストレッチなどを行い、転倒予防や日常動作の改善を図ります。また、言語聴覚士による発声・嚥下訓練も重要です。 リハビリテーションは、病気と向き合い、より良い生活を送るための強力なサポートとなります。
ALSのリハビリテーションも、症状に応じて個別に行われます。呼吸筋を鍛える呼吸リハビリテーション、嚥下機能を維持・改善するための摂食嚥下リハビリテーション、そしてコミュニケーションを支えるための自助具や補助具の活用などが含まれます。 残された機能を最大限に活かすための支援が、ALS患者さんの生活の質を高めます。
患者さんと家族へのサポート
パーキンソン病、ALSともに、患者さん本人だけでなく、ご家族の精神的・身体的負担も大きい病気です。そのため、医療機関だけでなく、地域の支援センターや患者会、NPO法人など、様々な機関からのサポートが不可欠です。 早期に相談し、適切な支援を受けることが、患者さんとご家族の孤立を防ぎます。
サポート体制:
- 医療ソーシャルワーカー
- 訪問看護
- 介護サービス
- 患者会
- 情報提供
パーキンソン病とALSは、神経の病気という共通点はありますが、その性質は大きく異なります。それぞれの病気の違いを理解することは、適切な治療やサポートに繋がります。もし、ご自身や周りの方がこれらの病気で悩んでいる場合は、専門医に相談し、一人で抱え込まずに、周りのサポートを求めてください。