突発性発疹 と麻疹の違い:知っておきたい感染症の基本

子供の健康を守る上で、感染症の知識は欠かせません。特に、発疹を伴う病気は心配になるものですが、「突発性発疹」と「麻疹(はしか)」は、名前は似ているものの、原因や症状、そして対応が全く異なります。この二つの違いを正しく理解することは、 適切な早期発見と対応につながるため、非常に重要です。

原因とウイルスの違い

突発性発疹と麻疹は、それぞれ異なるウイルスが原因で引き起こされる病気です。突発性発疹は、主にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)または7型(HHV-7)というウイルスによって引き起こされます。これらのウイルスは、私たちの身近に存在しており、飛沫感染や接触感染で広がります。一方、麻疹は麻疹ウイルスという、非常に感染力が強いウイルスによって引き起こされます。空気中を漂うウイルスを吸い込むだけで感染してしまうほど、感染力が強いのが特徴です。

  • 突発性発疹の主な原因ウイルス:
    • ヒトヘルペスウイルス6型 (HHV-6)
    • ヒトヘルペスウイルス7型 (HHV-7)
  • 麻疹の主な原因ウイルス:
    • 麻疹ウイルス

この原因ウイルスの違いは、病気の広がりやすさや、合併症のリスクにも影響を与えます。麻疹ウイルスは、感染力が非常に高いため、集団発生を起こしやすい傾向があります。また、一度感染すると、重症化するリスクも無視できません。

症状の経過と特徴

突発性発疹と麻疹では、症状の現れ方や経過が大きく異なります。突発性発疹では、まず3〜4日間、38℃〜40℃の高熱が続きます。この高熱が解熱した頃に、体幹や首、顔などにピンク色で小さな発疹が出現するのが特徴です。発疹は数日で消えることがほとんどで、かゆみはあまり強くありません。一方、麻疹は、潜伏期間を経て、まず38℃以上の高熱、咳、鼻水、結膜炎(目やに、充血)といった風邪に似た症状が現れます。熱が一旦下がったかと思うと、再び高熱が出て、その頃に顔や耳の後ろから全身へと広がる、赤くて平らな発疹が出現します。発疹は数日間続き、その後、色素沈着を残して消えていきます。

以下に、それぞれの病気の症状の経過をまとめました。

症状 突発性発疹 麻疹
発熱 高熱(3〜4日間) 高熱(2段階で出ることも)
発疹 解熱後に出現、ピンク色、体幹中心 高熱時に出現、赤色、全身に広がる
その他の症状 比較的少なく、元気なことも多い 咳、鼻水、結膜炎、倦怠感

発疹の出方とタイミングは、診断の重要な手がかりになります。 特に、麻疹の発疹は、咳や鼻水といった風邪症状とともに出現することが多いため、注意が必要です。

合併症のリスク

どちらの病気も、重症化すると合併症を引き起こす可能性がありますが、その種類と頻度は異なります。突発性発疹では、まれに熱性けいれんを起こすことがあります。これは、急な体温の上昇によって起こることが多く、一時的なものであることがほとんどです。しかし、麻疹は、肺炎や中耳炎、脳炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクが比較的高い病気です。特に、免疫力が低下している人や、乳幼児では重症化しやすいため、注意が必要です。

合併症について、さらに詳しく見ていきましょう。

  1. 突発性発疹の合併症:
    1. 熱性けいれん
    2. まれに脳炎
  2. 麻疹の合併症:
    • 肺炎
    • 中耳炎
    • 脳炎
    • 血小板減少性紫斑病
    • 亜急性硬化性全脳炎 (SSPE) ※非常にまれだが重篤

合併症の予防や早期発見は、治療の予後を大きく左右します。 麻疹による合併症は、生命に関わることもあるため、予防接種が非常に重要になります。

感染経路と予防策

突発性発疹と麻疹の感染経路には違いがあり、それに伴って予防策も異なります。突発性発疹は、主に咳やくしゃみによる飛沫感染、またはウイルスが付着したものを触った手で口や鼻を触ることによる接触感染で広がります。感染力が比較的弱いため、家族内感染はありますが、学校などで爆発的に流行することは少ない傾向にあります。一方、麻疹は、感染力が非常に強く、空気感染によっても広がります。そのため、感染者がいる空間にいるだけで感染する可能性があります。

それぞれの感染経路と予防策をまとめました。

  • 突発性発疹の感染経路:
    • 飛沫感染(咳、くしゃみ)
    • 接触感染(ウイルスが付着したものを触る)
  • 麻疹の感染経路:
    • 飛沫感染
    • 空気感染
    • 接触感染

麻疹の最大の予防策は、麻疹ワクチン(MRワクチン)の接種です。 ワクチン接種により、麻疹ウイルスに対する免疫を獲得することができます。

診断と受診の目安

医療機関での診断は、医師の問診や視診、そして必要に応じて検査によって行われます。突発性発疹の場合、特徴的な発熱の経過と発疹の出現パターンから診断されることがほとんどです。特別な検査は行われないことも多く、対症療法が中心となります。麻疹の場合も、症状や発疹の出現から疑われますが、確定診断のためには血液検査や鼻・のどのぬぐい液検査などが行われることがあります。 発熱と発疹が出た場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが大切です。

受診の目安について、以下にまとめました。

  1. 受診の目安:
    • 突然の高熱
    • 原因不明の発疹
    • 咳、鼻水、目の充血などの症状を伴う発熱

特に、麻疹が流行している時期には、周囲に感染者がいる可能性も考慮し、慎重な判断が必要です。

治療法

突発性発疹と麻疹の治療法は、根本的な原因がウイルスであるため、特効薬はありません。どちらの病気も、基本的には症状を和らげる対症療法が中心となります。突発性発疹では、発熱に対して解熱剤を使用したり、脱水を防ぐために水分補給をしっかりと行ったりします。麻疹の場合も、同様に発熱や咳などの症状を緩和するための対症療法が行われます。ただし、麻疹は合併症のリスクが高いため、合併症が現れた場合は、それに応じた治療が必要になります。 早期の医療機関受診は、合併症の早期発見・早期治療につながります。

治療法について、さらに詳しく見ていきましょう。

病気 主な治療法 注意点
突発性発疹 対症療法(解熱剤、水分補給) 熱性けいれんに注意
麻疹 対症療法(発熱、咳、鼻水などの緩和) 合併症(肺炎、脳炎など)の管理・治療

麻疹による重症化を防ぐためには、ワクチン接種が最も効果的です。

まとめ

突発性発疹と麻疹は、発疹を伴うという共通点はあるものの、原因ウイルス、症状の経過、感染力、合併症のリスク、そして予防法において、全く異なる病気です。突発性発疹は比較的軽症で済むことが多いですが、麻疹は重症化しやすく、合併症も恐ろしい病気です。 お子さんの健康を守るためにも、この二つの違いをしっかりと理解し、麻疹についてはワクチン接種を計画的に行うことが大切です。 発熱や発疹が見られた際には、自己判断せず、速やかに医師に相談しましょう。

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