腫瘍と腫瘤の違い、その真相に迫る!

「腫瘍」と「腫瘤」、これらの言葉を聞いて、あなたはどのような違いを思い浮かべますか?実は、この二つの言葉はしばしば混同されがちですが、医療の現場では明確な区別があります。 腫瘍と腫瘤の違いを正しく理解することは、自身の健康管理において非常に重要です。

腫瘍と腫瘤、根本的な違いとは?

まずは、それぞれの言葉の定義から見ていきましょう。腫瘤(しゅりゅう)というのは、体の中にできた「こぶ」や「できもの」といった、触ってわかる、あるいは画像検査で確認できる塊全般を指す、より広範な言葉です。例えば、炎症によってできた膿の塊や、良性の脂肪の塊なども腫瘤に含まれます。

一方、腫瘍(しゅよう)は、細胞の異常な増殖によってできた「できもの」の中でも、特に「がん」の可能性を秘めているか、あるいはすでにがんであるものを指します。細胞が自律的に、そして無秩序に増殖し続ける性質を持っているのが特徴です。

この二つの関係性を理解するために、以下の表をご覧ください。

言葉 意味
腫瘤 体の中にできた塊全般 炎症による膿、脂肪腫、良性腫瘍、悪性腫瘍(がん)
腫瘍 細胞の異常増殖によるできもの(がんの可能性を含む) 良性腫瘍、悪性腫瘍(がん)

腫瘤の種類と特徴

腫瘤と一口に言っても、その性質は様々です。体調の変化や、ふとした時に体の表面に「なんかできてる?」と感じたものが腫瘤であることが多いでしょう。その中には、特に心配のないものから、専門医の診断が必要なものまで含まれます。

腫瘤は、大きく分けて以下の3つのグループに分類できます。

  • 炎症性腫瘤 :細菌感染などにより、白血球が集まってできた膿(うみ)などが原因で生じます。
  • 先天性・後天性腫瘤 :生まれつき持っていたものや、成長の過程でできたものなど。例えば、皮膚にしこりとして現れる「粉瘤(ふんりゅう)」などがこれにあたります。
  • 腫瘍性腫瘤 :細胞の異常増殖によるもので、良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)に分けられます。

自己判断は禁物ですが、まずは「できもの=腫瘤」と捉え、その大きさを記録したり、痛みの有無などを観察したりすることが、後に医師に伝える際に役立ちます。

「腫瘍」が注目される理由

「腫瘍」という言葉が、より深刻な病気と結びつけられることが多いのには理由があります。それは、腫瘍が持つ「増殖し続ける」という性質です。

腫瘍には、大きく分けて良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)があります。良性腫瘍は、周囲の組織に染み込むように広がることはなく、転移もしません。しかし、大きくなると周囲の臓器を圧迫して問題を引き起こすこともあります。良性腫瘍の例としては、子宮筋腫や脂肪腫などが挙げられます。

一方、悪性腫瘍、つまりがんは、周囲の組織に染み込んで破壊したり、血管やリンパ管に入り込んで体の他の場所に「転移」したりする性質を持っています。この転移が、がんが命に関わる病気とされる最も大きな理由です。

良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)の見分け方

では、腫瘤が良性なのか悪性なのか、どのように見分けるのでしょうか?残念ながら、見た目や触った感触だけで正確に判断することは非常に困難です。

医療機関では、以下のような方法で診断を進めます。

  1. 問診・触診 :医師が患者さんの自覚症状を聞き、できものの大きさ、硬さ、痛みなどを実際に触って確認します。
  2. 画像検査 :レントゲン、CT、MRI、超音波(エコー)などの検査で、できものの内部構造や周囲との関係を詳しく調べます。
  3. 病理検査(生検) :できものの一部、あるいは全部を採取し、顕微鏡で細胞の性質を詳しく調べます。これが最も確実な診断方法です。

特に、短期間で大きくなったり、硬く触れたり、痛みを伴ったりする場合は、注意が必要です。しかし、これらの特徴がない場合でも、良性とは限りません。専門医の診断を受けることが不可欠です。

「腫瘤」が「腫瘍」に進行する可能性

全ての腫瘤が腫瘍になるわけではありません。しかし、一部の腫瘤は、時間とともに性質が変化し、腫瘍、特に悪性腫瘍(がん)に進行する可能性があります。

例えば、皮膚にできる「ほくろ」も、良性のものが多いですが、中には「悪性黒色腫(メラノーマ)」という皮膚がんになるものもあります。また、胃や大腸などの粘膜にできるポリープも、良性ポリープと、がん化しやすい「腺腫」に分けられます。

この「進行」という言葉は、腫瘤がより悪性度の高いものへと変化していく過程を指します。定期的な検診や、気になる症状があった場合に早期に受診することが、この進行を食い止める鍵となります。

「腫瘤」の発見と「腫瘍」の早期発見・早期治療

「腫瘤」を発見した際、そして「腫瘍」の疑いがある場合、最も大切なのは「早期発見・早期治療」です。

「腫瘤」は、ご自身で気づくことも多いですが、体の中のできものは、初期段階では自覚症状がないことがほとんどです。そのため、定期的な健康診断やがん検診が非常に重要になります。

もし「腫瘤」を発見したら、まずは冷静に、しかし迅速に医療機関を受診しましょう。医師による正確な診断を受けることで、良性であれば経過観察、あるいは必要に応じて治療が行われます。悪性腫瘍(がん)であったとしても、早期に発見できれば、治療の選択肢も広がり、根治の可能性も高まります。

「腫瘍」と「腫瘤」の言葉の使い分け

医療従事者は、患者さんとのコミュニケーションにおいて、この「腫瘤」と「腫瘍」という言葉を慎重に使い分けています。患者さんに過度な不安を与えすぎず、しかし病状を正確に伝える必要があるためです。

一般的に、まだ良性か悪性か確定していない「できもの」に対しては「腫瘤」という言葉を使い、診断が確定し、細胞の異常増殖によるものであることがわかった時点で「腫瘍」という言葉を使うことが多いようです。悪性腫瘍と診断された場合は、「がん」という言葉で説明されます。

このように、言葉の選び方一つにも、患者さんへの配慮が込められています。もし、ご自身の診断名や医師の説明で不明な点があれば、遠慮なく質問することが大切です。

「腫瘍」と「腫瘤」、これらの違いは、単なる言葉の区別にとどまらず、病気の性質や危険度を示す重要な指標です。ご自身の体にできた「できもの」に対して、まずは「腫瘤」という広い意味で捉え、心配な場合は迷わず医療機関を受診することが、健康を守るための第一歩となります。早期発見・早期治療こそが、多くの病気から身を守るための最善策なのです。

Also Reads: