「研修医」と「インターン」、医療の世界に足を踏み入れたばかりの皆さんや、これから医療現場に興味を持つ方々にとって、この二つの言葉はしばしば混同されがちです。しかし、実はこれらには明確な違いがあり、その役割や身分、さらには研修内容にも大きな差があります。本記事では、この「研修医とインターンの違い」を分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
研修医とインターンの基本的な位置づけ
まず、研修医とインターンの基本的な位置づけから見ていきましょう。「研修医」とは、医師免許を取得したばかりの、いわゆる「新人医師」のことです。卒業後、臨床研修プログラムを通じて、様々な診療科をローテーションしながら、実践的な医療技術や知識を習得していく段階を指します。一方、「インターン」という言葉は、医療現場においてはやや広い意味で使われることがありますが、一般的には、学生が医療機関で一定期間、医師の業務を体験する「医学生」を指すことが多いです。つまり、医師免許を持っているかどうかが、研修医とインターンを分ける大きなポイントとなります。
この違いを理解することは、医療現場の構造を知る上で非常に重要です。 研修医は、法的に定められた研修を受け、一人前の医師を目指す「正式な立場」 であるのに対し、インターンは、あくまで学習や体験を目的とした「学生としての立場」と言えます。
具体的には、以下のような違いがあります。
- 研修医: 医師免許取得者。臨床研修プログラムに参加し、指導医のもとで診療行為の一部を行う。
- インターン: 医学生。医師免許はまだ持っていない。医療現場を見学したり、簡単な手技を学んだりする。
研修医は、診療報酬も発生する「雇用されている」立場ですが、インターンは「見習い」としての性格が強いのが一般的です。
研修医の役割と義務
研修医は、医師免許を取得し、一人前の医師となるための第一歩を踏み出した者です。彼らの主な役割は、指導医の監督のもと、実際の患者さんの診療に携わることで、臨床能力を磨くことです。
具体的には、以下のような義務や役割が研修医には課せられます。
- 患者さんの診察・問診: 担当医の指示のもと、患者さんの訴えを聞き、診察を行います。
- 検査結果の評価: 血液検査や画像検査などの結果を分析し、病状の把握に努めます。
- 治療方針の立案補助: 指導医と共に、患者さんの状態に合わせた治療方針を検討します。
- 記録作成: 診療記録(カルテ)を正確に記録し、共有します。
- カンファレンスへの参加: チーム医療の一員として、症例検討会などに積極的に参加します。
これらの業務を通じて、研修医は多様な疾患や患者さんへの対応を学び、医師としての基礎を築いていきます。
インターンの活動内容
インターン、すなわち医学生の医療現場での活動は、研修医とは異なり、より学習・体験に重点が置かれます。彼らはまだ医師免許を持っていないため、直接的な診療行為を行うことはありませんが、医療現場の雰囲気を肌で感じ、医師の仕事の実際を学ぶ貴重な機会を得ます。
インターンの活動内容は、医学生の学年や受け入れ先の病院によって様々ですが、一般的には以下のようなものが挙げられます。
| 活動内容 | 詳細 |
|---|---|
| 診療科見学 | 各診療科の医師の働きぶりや、患者さんとの関わり方を間近で見学する。 |
| 手技の指導 | 採血や点滴などの基本的な手技を、指導医や看護師の指導のもと、シミュレーターなどを利用して練習する。 |
| カンファレンス参加 | 研修医や上級医が行う症例検討会などにオブザーバーとして参加し、学習する。 |
| 医療知識の習得 | 症例発表を聞いたり、教科書で学んだ知識を現場で確認したりする。 |
インターンシップは、医学生が将来どのような分野の医師になりたいかを考える上で、非常に有益な経験となります。
研修医の「研修」とは?
「研修医」という名前の通り、彼らの活動の中心は「研修」です。この研修は、単に経験を積むだけでなく、体系的かつ計画的に行われます。日本の多くの研修医は、「臨床研修医制度」という国の定めたプログラムに沿って研修を行います。
この制度の主な特徴は以下の通りです。
- 必修診療科: 内科、救急、外科、小児科、産婦人科、精神科、地域医療など、必須とされる診療科をローテーションします。
- 選択診療科: 興味のある診療科や、将来進みたい分野の診療科を、選択して研修する期間もあります。
- 指導医制度: 各診療科には、研修医を指導する「指導医」が配置され、日々の業務の指導や評価を行います。
- 学習目標: 研修期間を通じて、どのような知識や技術を習得するか、具体的な学習目標が設定されます。
この制度により、研修医は幅広い知識と技術をバランス良く習得し、医師としての総合的な能力を高めることができるのです。
インターンの「期間」と「目的」
インターンシップの期間や目的は、受け入れる医学生と医療機関の双方の意向によって決定されます。一般的には、数週間から数ヶ月といった比較的短い期間で行われることが多いです。
インターンシップの主な目的としては、以下のようなものが挙げられます。
- 職業体験: 医師という職業の実際を知り、適性や興味を確認する。
- 大学病院や専門分野の理解: 特定の大学病院や診療科の特色、雰囲気を知る。
- 将来の進路選択: 卒業後の進路、特に専門分野や勤務先の病院を選ぶための参考にする。
- 実践的な学習: 教科書だけでは学べない、臨床現場での生きた知識や技術に触れる。
インターンシップは、医学生が将来のキャリアを真剣に考えるための、貴重な「お試し期間」と言えるでしょう。
研修医とインターンの「身分」の違い
研修医とインターンを分ける最も大きな要因の一つに、「身分」があります。この身分の違いは、彼らの権利や義務、そして法的な位置づけに大きく影響します。
- 研修医: 医師免許を持つ「医師」であり、多くの場合、医療機関と雇用契約を結んだ「職員」としての身分になります。そのため、労働基準法などが適用され、一定の給与が支払われます。
- インターン: 医学生であり、まだ医師免許を持っていません。基本的には「学生」としての身分であり、無給の場合や、交通費程度の支給がある程度であることが一般的です。
この身分の違いから、研修医はより責任のある業務を任される一方、インターンはあくまで「見学・学習」の範囲での活動となります。
また、これは保険や責任の所在という観点からも重要です。
| 項目 | 研修医 | インターン |
|---|---|---|
| 法的立場 | 医師、職員 | 医学生 |
| 診療行為 | 指導医のもと一部可能 | 原則不可(見学のみ) |
| 給与 | あり(雇用契約に基づく) | 原則なし、または交通費程度 |
| 賠償責任 | 医療機関・個人(過失による) | 基本的には発生しない(監督者の責任) |
このように、研修医とインターンでは、医療行為への関与度合いや、それに伴う責任、そして経済的な待遇にも明確な差があるのです。
研修医とインターンの違いについて、それぞれの役割、活動内容、身分といった側面から詳しく見てきました。この二つの言葉は似ているようで、医療現場での立場や役割は大きく異なります。この違いを理解することは、医療現場をより深く理解するための一歩となるはずです。