丹毒蜂窩織炎違い：見分け方と対処法

「丹毒（せつ）」と「蜂窩織炎（ほうかしきえん）」は、どちらも細菌感染によって皮膚や皮下組織が炎症を起こす病気ですが、その原因や症状、重症度に違いがあります。この違いを理解することは、適切な治療を受け、早期回復につなげるために非常に重要です。本記事では、「丹毒蜂窩織炎違い」について、分かりやすく解説していきます。

丹毒と蜂窩織炎の主な違い

丹毒と蜂窩織炎は、どちらも細菌が原因で起こる皮膚の感染症ですが、その炎症の広がり方や深さに違いがあります。丹毒は、皮膚の浅い部分（真皮）に炎症が起こり、境界がはっきりとした赤みや腫れが特徴です。一方、蜂窩織炎は、皮膚のより深い部分（皮下組織）まで炎症が広がり、境界が不明瞭で、赤みや腫れが広範囲に及ぶ傾向があります。 この炎症の深さと境界の明瞭さが、「丹毒蜂窩織炎違い」を理解する上で最も重要なポイントと言えるでしょう。

それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。

丹毒:

原因菌: 主にA群溶血性レンサ球菌
炎症の深さ: 皮膚の浅い層（真皮）
症状: 境界がはっきりした、地図状の赤み、熱感、痛み、腫れ
合併症: リンパ管炎、敗血症（まれ）

蜂窩織炎:

原因菌: 黄色ブドウ球菌、A群溶血性レンサ球菌など
炎症の深さ: 皮下組織まで
症状: 境界が不明瞭な赤み、腫れ、熱感、痛み、時に水ぶくれ
合併症: 膿瘍、壊死性筋膜炎（重症の場合）

また、発熱や悪寒などの全身症状が現れることもありますが、蜂窩織炎の方がより強く現れる傾向があると言われています。

感染経路の違い

丹毒と蜂窩織炎は、どちらも皮膚の小さな傷や亀裂から細菌が侵入することで起こります。しかし、その感染経路には微妙な違いが見られます。丹毒は、特に虫刺されや切り傷、しもやけなどが原因となることが多いです。一方、蜂窩織炎は、アトピー性皮膚炎や水虫など、皮膚のバリア機能が低下している状態や、傷口からの感染がより一般的です。

感染経路をまとめると以下のようになります。

病気	主な感染経路
丹毒	虫刺され、切り傷、擦り傷、しもやけ、水虫による皮膚の亀裂
蜂窩織炎	アトピー性皮膚炎、水虫、褥瘡（床ずれ）、手術創、打撲による皮下出血

どちらの病気も、免疫力が低下している方（高齢者、糖尿病患者、ステロイド剤を長期使用している方など）は感染しやすく、重症化しやすい傾向があります。

症状の進行速度

症状の進行速度も、「丹毒蜂窩織炎違い」を判断する上での手がかりとなります。丹毒は比較的ゆっくりと進行することが多く、数日かけて赤みや腫れが広がっていきます。初期段階では、虫刺されのような小さな赤みから始まり、徐々に範囲が広がっていくのが特徴です。対して蜂窩織炎は、より急速に進行することがあり、数時間から1～2日で急激に赤みや腫れ、痛みが強くなることがあります。

進行速度の目安は以下の通りです。

丹毒: 数日かけて徐々に悪化
蜂窩織炎: 数時間～1～2日で急速に悪化

ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、個々の状況によって異なります。急激な悪化が見られる場合は、すぐに医療機関を受診することが大切です。

現れる部位の違い

丹毒と蜂窩織炎は、現れる部位にも傾向があります。丹毒は、顔面や下肢に起こりやすいとされています。特に顔にできた丹毒は「顔面丹毒」と呼ばれ、高熱を伴うこともあります。一方、蜂窩織炎は、下肢に最も多く見られますが、全身のあらゆる部位に発生する可能性があります。足の指の間や、傷のある場所などにできやすい傾向があります。

発生しやすい部位の傾向:

丹毒: 顔、下肢
蜂窩織炎: 下肢（特に足）、傷のある部位、全身

ただし、これも絶対的なものではなく、個人差があります。

痛みの種類と強さ

痛みの種類や強さも、「丹毒蜂窩織炎違い」を推測する際の参考になります。丹毒の場合、患部は熱を持ち、触ると痛みがありますが、チクチクとした痛みや、ズキズキとした鈍い痛みが主です。蜂窩織炎の場合は、より強い痛みを感じることが多く、ズキズキとした脈打つような痛みが特徴的です。また、炎症が深くまで及んでいるため、圧迫感や重い感じを伴うこともあります。

痛みの特徴:

丹毒: 熱感、触ると痛む、チクチク・ズキズキとした鈍い痛み
蜂窩織炎: 強い痛み、ズキズキとした脈打つような痛み、圧迫感

痛みの感じ方には個人差がありますが、急激に痛みが強くなる場合は注意が必要です。

治療法の違い

「丹毒蜂窩織炎違い」を理解した上で、適切な治療を受けることが重要です。どちらの病気も、細菌感染が原因であるため、抗菌薬による治療が基本となります。しかし、炎症の深さや重症度によって、治療法に違いが出てきます。丹毒は比較的浅い感染のため、内服薬での治療が可能な場合が多いですが、蜂窩織炎はより深い感染であるため、入院して点滴で抗菌薬を投与する方が効果的な場合もあります。

治療法の概要:

共通: 抗菌薬による治療
丹毒: 内服薬が中心、安静、患部の冷却（必要に応じて）
蜂窩織炎: 点滴による抗菌薬投与（重症の場合）、入院、安静、患部の挙上（腫れを軽減するため）

重症化すると、外科的な処置が必要になる場合もあります。自己判断せず、必ず医師の診断と指示に従って治療を進めましょう。